第103回薬剤師国家試験にも出た内容です。
試験内容は
2歳男児。夕方に発熱があり、同時に痙れんが起こったので近所の小児科を受診した。その後、母親が処方施を薬局に持参した。その処方内容は以下のとおりであった。
(処方1)
アセトアミノフェン坐剤100 mg1回1個
発熱時 6回分(全6個)
(処方2)
ジアゼパム坐剤4 mg1回1個
発熱時 4回分(全4個)
注 アセトアミノフェン坐剤の基剤:ハードファット ジアゼパム坐剤の基剤:マクロゴール
問282 (実務) 薬剤師が坐剤の使用経験を確認したところ、坐剤の併用は初めてとのことであった。そこで、この2種類の坐剤の併用方法について説明した。その内容として適切なのはどれか。1つ選べ。
1 アセトアミノフェン坐剤を先に挿入し、熱が下がってからジアゼパム坐剤を挿入してください。 2 ジアゼパム坐剤を先に挿入し、3〜5分ほどしてからアセトアミノフェン坐剤を挿入してください。 3 アセトアミノフェン坐剤を先に挿入し、3〜5分ほどしてからジアゼパム坐剤を挿入してください。 4 ジアゼパム坐剤を先に挿入し、30分以上してからアセトアミノフェン坐剤を挿入してください。 5 アセトアミノフェン坐剤を先に挿入し、30分以上してからジアゼパム坐剤を挿入してください。 6 アセトアミノフェン坐剤を挿入したら、直ちにジアゼパム坐剤を挿入してください。
問283 (薬剤) 前問の投与順を選択した理由として適切なのはどれか。1つ選べ。
1 アセトアミノフェン坐剤とジアゼパム坐剤を同時に投与すると、直腸内で両主薬の溶解度が上昇し、吸収量が増加する。 2 アセトアミノフェン坐剤とジアゼパム坐剤を同時に投与すると、主薬間で不溶性の複合体を形成し、吸収量が減少する。 3 ジアゼパム坐剤を先に投与すると、アセトアミノフェンがマクロゴールに分配し、吸収量が減少する。 4 アセトアミノフェン坐剤を先に投与すると、ジアゼパムがハードファットに分配し、吸収量が減少する。 5 マクロゴールによってハードファットが不溶化し、アセトアミノフェンの溶出量が減少する。
答えは、両方とも4になります。
解説 熱性けいれんに対して、アセトアミノフェン坐剤とジアゼパム坐剤を併用する場合には、ジアゼパム坐剤を挿入し、その後、30分以上してからアセトアミノフェン坐剤を挿入する。 <理由> 先にアセトアミノフェンを使用すると、アセトアミノフェンの基剤であるハードファットにより粘膜表面に油膜が形成される。その後、脂溶性薬物であるジアゼパムを投与すると、ジアゼパムがその油膜に分配し、吸収量が減少する。
熱性けいれんの治療(熱性けいれん診療ガイドライン2015)
・熱性けいれんの患者の半数以上は、1回の発作しか起こさない。(25~50%)
・再発防止のための抗けいれん薬は、すべての患者に必要とされるものではない。
初期対応
熱性けいれんを起こして来院した患者において、外来でジアゼパム坐薬を使用することは発作の再発予防に一定の効果があると考えれる。
ただし坐薬を入れなくとも再発のみられない患者も多く、ジアゼパム坐薬によるふらつきでの転倒、ジアゼパム坐薬による眠気で髄膜炎や急性脳症の症状がマスクされる危険性などから、ルーチンで熱性けいれん前例においてジアゼパム坐薬を使用する必要はないであろう。
外来でのジアゼパム坐薬の適応は、各医療機関の体制や自宅と医療機関の距離などの地域性、家族の心配などを考慮して決めるのがよいと考えられる。
・37.5度以上(目安)の発熱時に、ジアゼパムを投与し、初回投与から8時間後も発熱が継続している場合、同量を追加できる。
・通常は2回の投与までだが、状況により3回目を投与する場合には、初回投与から24時間以降とする。
・ジアゼパムの投与対象期間は、最終発作から2年以内、または4~5歳までが目安
・発熱時の解熱薬投与による、熱性けいれん再発予防効果のエビデンスはない
・解熱薬は、高熱に対する苦痛緩和のための投与
家庭での応急処置 (熱性けいれんの指導ガイドライン 1996)
1.あわてないで落ち着くこと
2.衣類をゆるくすること。(とくに首のまわりをゆるくする)
3.頭部を軀幹よりもやや低くし、仰臥位にして顔を横に向け、頭部をそりぎみにする。
嘔吐、分泌物が口のまわりや鼻孔にたまっていたら、ガーゼで拭き取る
歯をくいしばっている時でも、口の中に物を口に入れない。
4.体温を測定し、発作の長さ(持続時間)と性状(左右差、眼球偏位等)を観察記録する。
5.口から薬や物を与えない。
6.もとにもどるまで必ずそばにいる。
<お問い合わせ先> 札幌市白石区南郷通7丁目北5-1 駐車場有 有限会社 中村薬局 認定薬剤師 中村峰夫 011-861-2808 https://www.kanpo-nakamura.com/